業界に激震 メルボグループ3社が青山商事の傘下に 紳士服業界の今年の課題

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業界に激震 メルボグループ3社が青山商事の傘下に 紳士服業界の今年の課題

メルボ紳士服工業株式会社(清水貞博代表取締役社長)、メルボメンズウェアー株式会社(清水貞行代表取締役社長)、株式会社エススクエアード(清水貞行代表取締役社長)の3社が青山商事の傘下に入ることが決まった。ロンナーのアパレル撤退に続く衝撃のニュースとして、業界に激震が走った。メルボ紳士服は、20年前の2002年、経営に行き詰まり、民事再生法を適用し、小売形態の麻布テーラーをベースに再スタート。ラシャ業界のマルキシ(当時の岸社長はメルボで修業)が生地の提供をし、着実に実績を伸ばす。また、付属類では島田商事が全面的にバックアップ。2019年には年商50億円(推定)近くまで伸長するも、コロナ禍で売上減少に歯止めがかからず、その間、滋賀県と広島県の2工場の資金繰りも圧迫。今回の決断に至ったとされる。

紳士服、特にスーツ市場は働き方改革、欧米の影響を受けるなど、カジュアル化が進行。多くのサラリーマンは、職種によって異なるも、スーツ着用からジャケット&パンツ(ジーンズ、綿パンなど)スタイルが増えた。特に、春夏シーズンにおいては、非常にラフでカジュアルなファッションが浸透。この傾向はここ数年、継続している。このためスーツの需要は減少の一途にある。これを裏付けるデータが以下の内容である。

※2021年1月〜12月のメンズスーツ輸入量は381万7000着(2020年輸入量518万着)、前年比−26%となった。輸入平均単価は7700円(FOB価格)。おそらく、業界の多くは予想外の減少に驚いているだろう。この想定外の数字については、さまざまな見解があるだろうが、最大に要因はコロナ禍の影響にあると言って、間違いないだろう※

これからの日本における紳士服市場はどうなるのか。情報を収集し、業界マーケティング専門の見解を集約、その上での見通しを立ててみた。

  • スーツは既製服に対して、オーダー商品が市民権を獲得し、シェアを30%強にまで伸ばすだろう。
  • 可処分所得に格差が見られ、高額層、低額層に対しての中間消費層の空洞化が見られ、市場MDは「高いか、安いか」の戦略が継続。
  • イタリアを中心とした輸入が、今年、コロナ禍が沈静化するとの前提で、復活に期待がかかる。
  • 国産のものづくりがポイントになる。これまでの大量生産・大量消費は終焉にあることから、消費者のニーズに合致した企画が必要になる。具体的には、価格の追求、付加価値に合った上質のものづくり、デザイン・シルエットにおけるソフト面の充実など。
  • サスティナブル、SDGs対応である。欧米では、生産過程においてCO2を排出する商品に対しては、厳しい判断にある。いくら原材料に神経を使っても、機械を動かす動力が火力発電である場合、すでにCO2を排出していると見なすからである。

 

以上に挙げた5つについて、今年の紳士服業界の大切な課題になるだろう。

小売業界は2022年、前半は試練の連続を強いられると予測する。その中で、売上を作るとなると、徹底した顧客管理とニーズにあった商品企画を必要不可欠である。低価格ゾーンで勝負するか、高額消費・付加価値消費層で勝負するか。これを考えると、受注生産のオーダーの充実、輸入商品の展開が考えられる。いずれにしても、現状からこれからの雲行きを把握することである。雨が降るのに傘を持たない、晴れになるというのに傘を持ち歩いている、このような無盲経営は落ちこぼれる時代にある。舵取りを間違えると、瞬く間に沈んでしまう。経営手腕が問われる。


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