フィレンツェに日本人初のテーラー「corcos(コルコス)」を開業した宮平康太郎氏を以前、ビスポークニュースで取り上げたが、今回は師匠であるフランチェスコ グイーダ氏(66)を取材した。店舗であり工房は「sartoria francesco guida」。フィレンツェ近郊のプラート市にある。ナポリ独自の技術を身に付、今も研究、進化を目指すフランチェスコ氏の技術、洋服哲学などについて聞いた。
――簡単な経歴を
1951年、イタリア・カンパーニャ州、ナポリの北に位置するカゼルタ県生まれで、7歳の時、サルトであった2人の兄たちと、針と糸で熱心に遊び始めた。年齢を重ねると共に、さらに情熱が増し、やがて仕事となった。16歳の時、2人の兄が私の情熱を見て、ナポリのマエストロであるサルト「Franco Ordine(フランコ オルディネ)」の元に送った。このマエストロは1968年の「フォルビチ ドーロ」(金のはさみ賞 =国立サルトアカデミー主催のサルトとして最も重要な賞)の優勝者であった。ここで、ナポリ風の縫い方をしっかりと学んだ。
――ナポリ風の縫い方とは
ナポリ風とは、無駄な要素を取り除くという仕立てで、ジャケットは自然に体になじむというもの。しなやかさと軽やかさを重視しているのが特徴である。例えば、ナポリの男性たちが、会話するときに伴うジェスチャーがしやすいように作られているのである。ナポリのスタイルのジャケットはとても特徴のあるカッティングで、それは当時も今も変わることがない。
――修業時代を教えてほしい
ナポリに6年間とどまり、そのあと、自分のアトリエを構えようと決心したのである。24歳の時、妻と2人の娘を連れてローマへ向かった。そこで「Baiocco」の工房で少し働いたあと、フィレンツエへ向かい定住することになる。フィレンツェでは、何件も工房を訪ねた。新しいスタイル・技術を学ぶためである。現在に至っても、この年齢になっても、まだこの生業について新しいことを学ぶのを止まない。なぜならば、すべてのプロのサルト(仕立て職人)は常に、何かを学ぶことに熱心である。これは、自分にも当てはまると思っている。
――学び、習得したサルトの奥義とは
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