財務省貿易統計によるデータを集計したところ、2014年1-12月(上期)の輸入毛織物は、紡毛(ジャケット、コートなど)が数量(前年比+13.3%)、金額(同+11.9%)とも2桁の増加となり、梳毛(主にスーツ地)は数量(同-7.1%)が前年比を下回ったが、金額(同+4.8%)で伸びを示した。梳毛はウール85%以上のクオリティーが数量で前年比+1.1%をキープ、その他の梳毛が7.5%減った。紳士服市場は良質・付加価値へのシフトが顕著にあり、国内生産のスーツでは消費増税から消費価格の上昇がみられるなど、市場の動きが輸入毛織物と連動していると言えるだろう。
秋冬素材には欠かせない紡毛輸入は、カジュアル志向の追い風もあり、前年に引き続き、好調に増加、推移した。
為替の影響で金額でも大幅に増加を示した。結果、紡毛の総輸入量は235万㎡、金額で38億5158万円余り、梳毛は1916万1132㎡余り、金額で175億9060万円となった。
【紡毛】輸入数量構成比ではイタリアが44.3%、中国38.9%、英国14.5%で、この3国が全輸入量の約98%占めた。金額ではイタリア51.0%、中国30.2%、英国16.4%となり、紡毛に関してはイタリアがトップの輸入国を維持。1㎡あたり毛85%以上の輸入金額(FOB価格)を比較すると(右表参照)、イタリア2764円(前期比99.5%)、英国1834円(同116.6%)、中国1730円(同102.8%)の順。中国、英国で価格の上昇がみられた。輸入エージェントの話によると「紡毛は比較的扱いやすいので、中国物が結構輸入されている。カシミヤなどの高級原料が強いこともあって、金額も通しやすい。中国製品は競争力がある」という。
【梳毛】輸入数量構成比では中国が66.0%と全輸入量の6割以上を占め、イタリア24.7%、英国6.5%の順。この3国が全輸入量の約97%占めた。金額ではイタリア45.6%、中国37.1%、英国13.3%となり、金額ではイタリアが1位をキープした。1㎡あたり毛85%以上の輸入金額(FOB価格)を比較すると、イタリア1641円(前期比107.9%)、英国1847円(同110.3%)、中国605円(同102.8%)、3国で前期比上昇を示した。スーツ地は色出し、織り、仕上げなど、高度な技術が必要とされるため、ノウハウを有するイタリア、英国の付加価値は高いとされる。逆に、紺、黒、グレーなどの定番色は中国製の進化が著しく、「イタリアなどから工場に技術指導を入れ、かなりグレードが上がってきている。低価格の既製服など、多くは中国製織物でニーズに対応している」と国内メーカーがコメントしている。